2012年11月29日
第50回 ビジネスICTセミナー×次世代サービス共創フォーラム
主催:NTTコミュニケーションズ株式会社
『良いことづくめ!”オフィスまるごとクラウド移行”のご提案』

講演者:株式会社ランコムシステムズ
代表取締役 金子孝治


セミナー講演概要サマリー


私は、「仮想デスクトップ」と「クラウドデータセンター」という2つのepoch-makingな技術を活用したeTotal Service のようなシステムが「明日の常識」になるのではないかとの予測からサービスを始めました。今回は、この2つの技術をコンピュータの技術の変遷の中で、どう捉えられるかをお話しいたします。
私は2005年に個人情報保護法が、施行された時、デジタル情報は、暗号化しても管理外になれば情報漏洩事故扱いになってしまうため、データを社外で扱える唯一の方法は“PCやメディアにデータがないThin Client Systemすなわち「仮想デスクトップシステム」しかないと考えておりました。実現方法としては、ファイルサーバーを含め業務システム全体を、堅牢なデータセンターの中で運用管理することです。この方法で情報漏洩のリスクをミニマイズできると考えました。このときCitrixのMetaFrameを知り、「仮想デスクトップ」のサービスを始めるきっかけとなりました。

安全なデータセンターで運用管理されているeTotal Service のような「仮想デスクトップシステム」は、BCP対応、セキュリティ、運用コストに優れ、且つ、使い勝手が良いため将来の標準になるだろうと考えました。Google AppやDropBoxのようなWebサービスもネットがあればどこからでもアクセスできるという効能としては、一部似ています。しかし、このようなWebサービスでは海外のパソコンやアプリケーションの入っていないパソコンからアクセスしても使えませんので、不完全なシステムと考えております。
私は、富士ゼロックスで1983年からJ-Starというワークステーションを販売していました。これは、現在のパソコンの起源・原型であり、XeroxのPARC(Palo Alto Research Center)で、30年以上も前に、将来のワークステーション環境はどうあるべきかという理想を先入観のない何も無いところから人間工学的に追求して作られたシステムです。弊社のホームページの設立の思いでも少々触れておりますが、既にこのシステムは、終了時デスクトップをサーバーへ移動という設定にしておきますとLAN上の何処からでも使い慣れた自分のデスクトップを呼び出して仕事ができる環境を実現しておりました。当時は回線スピードが、遅かったためデスクトップを呼び出すには時間がかかりましたが、今の仮想デスクトップと機能は同じです。私は、自分で必要なアイコンを並べた使い慣れたデスクトップがやはりパソコンを使って仕事をする人にとっては理想型であると思っております。

メインフレームの時代、企業は「社内電算室」でコンピュータを運用管理することが当然であり技術的にもそうせざるを得ませんでした。その後、メインフレームがオフコンに淘汰されオフコンが世界同一規格のPCサーバーに淘汰さました。2000年頃からは、回線の高速化と低価格化に伴い、複数の企業のサーバーを預かる「ハウジング」サービスがデータセンター業社の中で盛んになり、新たにデータセンターを始める業者も増えました。
現在、生産、物流、販売までコンピュータシステムを使わなくては、企業は活動できません。そのため、大企業のほとんどは既に、「社内電算室」をデータセンターでの「ハウジング」に移行しております。
「ハウジング」への移行の理由は、「社内電算室」にコンピュータを置くより、セキュリティ面、停電、火災、震災を考慮すると専門業者の堅牢なデータセンターの中で運用管理させる方がコスト面で優れているからです。
一般の企業では、データセンターのように耐震性に優れた建屋にガスタービンの発電機を複数備える設備を持つことはコスト的に不可能だからです。

「社内電算室」から「ハウジング」、「ハウジング」から「クラウドデータセンター」への移行が進むことについて、Harvard Business School のClayton M Christensen のDisruptive Technology(破壊的技術)、Disruptive Innovations(破壊的イノベーション)を参考にご説明しました。なぜ、クラウドデータセンターが、優れているかについては、「Above the Clouds」というUniversity of California Berkeleyの RAD Labのレポートからサーバー1万台の大規模データセンターと100台規模のデータセンターと比較すると、ネットワークコスト7分の1、ストレージコスト6分の1、運用管理コスト7分の1まで、効率的になるというデータがあります。このようなデータから大規模な「クラウドデータセンター」は、コスト面、バックアップ面で有利になると考えていることです。

加えて、「クラウドデータセンター」の安全性について、Amazonの3SやNTTコミュニケーションズのObject Storage 等のデータ保存サービスの堅牢性は、SLAで99.999999999% eleven nine というクラウドデータセンターでなければ不可能な高信頼性を持っています。
この背景には、サーバー仮想化、ルータの仮想化の技術の進歩があります。サーバー仮想化を利用したバックアップ機能を標準機能として備えている「クラウドデータセンター」の有利な点です。

「ハウジング」と「クラウドデータセンター」の比較では、更にデータセンターの立地条件が違います。「ハウジング」の場合は、基本は企業所有の物理サーバーを預けるためユーザー企業のスタッフがデータセンターに出向いてPCサーバーの設定をします。そのため、データセンター業社も企業の本社が多い、地価の高い都心にデータセンターを作らなければなりませんでした。それに比べて、「クラウドデータセンター」では、通信回線経由でPCサーバー機能を提供する仕組みです。そのため、「クラウドデータセンター」の立地条件は、地震の心配の少ない、地価が安い、電気代が安い(発電所に近い)、気候が寒冷な、場所となります。このことからも「クラウドデータセンター」がコスト的に有利と思います。

企業の中には、顧客情報などの重要なデータを他社のデータセンターに預けることなど出来ないと仰る方もいらっしゃいます。しかし、社外にデータを持ちだせないと言っている企業でも、矛盾している行動の一つに、顧客からの重要な情報が入っているメールシステムを「ホスティング」しているところが多々あります。これは、データセンターで運用されている「ホスティング」が、24時間365日無停止のサービスであることのメリットを認識しての行動なのか無知なのかは解りません。恐らく無知から来た行動のように思えます。メールシステムを「ホスティング」についてのセキュリティレベルは、個人がISP(インターネットサービスプロバイダー)から提供されるメールアドレスを使ったり、携帯メールを使っているのと同様です。「ホスティング」の仕組みは、データセンターの同じ物理サーバーを複数の企業、個人が使用するものです。
私は、メールシステムを「ホスティング」で利用することには、賛成です。しっかりした企業の運営するデータセンターでの「ホスティング」サービスから情報漏洩事故が起こったことは、ありませんので安全だと思っております。ただし、メールシステムを「ホスティング」している企業の方には、顧客情報を外部のデータセンターに出すことはセキュリティ上出来ないとは言って欲しくはないと思っております。
私のいた富士ゼロックスなどは、メールシステムは自社で運用しておりました。この理由は、全社員のメールの送受信のログを取っており何か情報事故が発生した場合の証拠とするためです。

「ハウジング」や「ホスティング」は、小規模のデータセンター業者でも可能なビジネスモデルですが、「クラウドデータセンター」は、規模の経済論理の上に成り立つビジネスモデルです。仮想サーバーを、Amazon Web ServiceのEC2に近い価格、品質で提供できる業者は、大規模な運用による「クラウドデータセンター」業者とみてよいと思います。価格が高い業者は、小規模センターによる運用のためeleven nineのようなデータ保存サービスの堅牢性は自社だけでは出来にくいと思います。
「クラウドデータセンター」の安全面のメカニズムを理解すると一般企業の自前の社内電算室やデータセンターへの「ハウジング」よりも安全面や信頼性で優れていると認識できると思います。既に、「クラウドデータセンター」の利用については、自治体はじめ、大手企業、金融機関が使い始め、結果ITコストを半分以下にすることが実現されています。

また、Public CloudとPrivate Cloudと2種類の「クラウドデータセンター」の表現があります。Private Cloudの方が、高価格でセキュリティ上優れているような扱いになっておりますが、内容的には同じものです。インターネットから クラウドデータセンターに直接アクセスできるものをPublic Cloudと云い。VPNを通して クラウドデータセンターにアクセスするものをPrivate Cloud云っています。クラウドデータセンター内のインフラは、全く同じものを利用しているとご理解ください。
お客様専用機器でのクラウドサーバーと云っているサービスもありますが、これはハウジングと同じことをクラウドという表現をしているにすぎません。ユーザーとしては、クラウドサービス業者の矛盾した表現には惑わされてないようにご注意いただきたいと思っております。

「クラウドデーターセンター」の選択ポイントについては、日本の企業は安全面を考慮して、国内立地の信頼できる企業の「クラウドデーターセンター」を利用するべきと考えます。
価格については、ボーダレスなインターネットの世界では、先行して世界展開しているAmazon Web Serviceが、基準になるだろうと思われます。 また、「仮想デスクトップ」を「クラウドデーターセンター」で運用管理しているeTotal Service の経済性について、年間の運用費を20万円/従業員のコストでご提供しております。一般の企業の社員1人当たり年間のIT運用管理費の2分の1以下を達成しております。

結論として、eTotal Service のようなITのアウトソーシングサービスを活用して、社内でのIT運用管理業務をミニマイズすることにより、空いた時間で、情報システム部の方々には、その本来業務である「ITをどう使うか?」、「ITをどう使ってどんなビジネスができるか?」、「ITは経営にどう役に立つのか?」を考えていただきたいと思っております。

以上


講演資料

ビジネスICTセミナー講演概要サマリー(PDF)
ビジネスICTセミナー講演スライド(PDF)